社長ブログ
ITで地域と企業を元気にする会社、株式会社フクールの福崎です。 役にたつ情報・・・・も少しはあるかもしれませんが(笑)、だいたいが他愛もない事だと思います! もし、良かったら読んでください。
流れる星は生きている
いやいや、壮絶なノンフィクション小説。
これも、本当に読んで良かったと感じさせてくれう本でした。
藤原てい著「流れる星は生きている」
「国家の教養」の藤原正彦さんのお母様。「孤高の人」の新田次郎さんの奥様。これが藤原ていさん。
藤原ていさんの実際の体験を元にした物語り。これがものすごい。
大東亜戦争中、満州にいた著者が、6歳、3歳、0歳の三人の子どもを連れて、満州から引き揚げ、朝鮮半島の38度線を越え、アメリカ軍に保護され、釜山から引き揚げ船にのり、故郷の長野県諏訪地方へ帰りつくまでの物語です。
この道のりが凄まじい!
物語の中を一環して、壮絶な内容なのですが、いくつか印象的な場面が。
引揚期の前半は、お金もない、衛生状態も悪い、布団もない狭くて古い1つの部屋に十数名が一緒に生活をして、状況が開かれる時を待つ日々。
最初は協力的だった人たちも極度の混乱の中での共同生活では、いがみ合ったり、口汚く罵り合ったりすることも出てきます。
そんな状況で、ていさんの3歳の息子の正彦ちゃんがジフテリアにかかります。それを治す注射には1000円という大金がかかる。
けど、ていさんはもちろん持っていない。そして、そこにいる誰もが持っていない。ましてや1円でも大切な大切なお金。
持っていたとしても、自分以外のために使うことは考えられないのですが・・・
この一緒に生活をしている団体のみんながお金を出してくれた。一人残らず全員が、貸してくれた。その前日まで喧嘩していた人も。
皆んなお金がない中で、全員がお金を恵んでくれた。全員が。
これが日本人だなと。
惻隠の情という言葉。困った人をみていると、何かして差し上げるという思いやりの頂点みたいな気持ち。美しいなと。
そして、この気持ちを大切にしたいと語る主人公のていさん。
そして、誰がいくら出してくれたなんか聞きたくないというていさん。
お金を出してくれたこと自体に感謝をする姿勢に感動を覚えました。
このような人間の美しさも感じられるのですが、他にも意地汚い人、自分のことしか考えていない人、ズルイ人、弱い人、賢い人、愚かな人…いろんな方々がいる。
そして、その人が持っている性質を、むき出しのまま生きている姿があった。
これも人間の側面。事実。
このような部分を持ちながらも、力を合わせたり、他者を思いやったりする事も出来る。
人間のいろんな側面を感じさせられるのですが、この本を通して一番感じるのは、人間の強さ。もっというと母の、女性の強さ、たくましさですね。
生きる。生き延びる。子供達を生かす。ということへの覚悟が、生への執着が、なんでもさせたんだと思う。卑怯でも何でも、この子供達を生かす事に全力を使う。
藤原正彦さんが何かの対談で言っていた事を思い出した。
「母だからこそ、生きられた」と。母は農家の出だから、生きる事への執着が強い。一方父は武士の家だから、卑怯な事をするくらいなら死んだほうがマシ。と考えるそうです。
「一緒に脱出するのが父だったら死んでいたかもしれません。」と語っていらっしゃいました。
そのような言葉も納得するくらいの強さが一環してみられました。
小説の最後、「もう死んでもいいんだ」「もうこれ以上は生きられない」という叫びが全てを物語っていますね・・・。
出来れば、今この時代に、みんなが読んで欲しいと思う一冊でした。